講演&ライヴ
『ゴンドラの唄』の誕生
── 劇中歌でたどる『その前夜』劇 ──
2013年10月26日(土)
相沢 直樹 + 飯島 香織
芸術座の舞台は劇中歌に彩られていました。中には流行歌としても人気を誇り,時代を越えて今日まで歌い継がれているものもあります。最も有名な『カチューシャの唄』『ゴンドラの唄』『さすらいの唄』は,いずれもロシア文学を原作にもつ舞台(順にトルストイ原作『復活』,ツルゲーネフ原作『その前夜』,トルストイ原作『生ける屍』)に挿入された劇中歌でした。
『ゴンドラの唄』(吉井勇詞,中山晋平曲)は『カチューシャの唄』が発表された翌年,大正4年(1915年)に帝国劇場で上演された『その前夜』劇で歌われた歌ですが,この劇には他に4つの劇中歌が挿入されていました。もともとツルゲーネフの小説は様々な歌や音楽に満ちていましたが,芸術座の舞台に挿入された歌には原作とは異なるところがあります。最も大きな,そして興味深い違いは,原作ではヴェネツィアのゴンドラ漕ぎが今では決して歌わないとただし書きされているのに,芸術座の舞台では船頭が『ゴンドラの唄』を歌うことです。
今回の講演では声楽家の飯島香織さんのご協力を得て,みなさんにいろいろな劇中歌を実際に聴いていただきながら,『その前夜』劇の舞台がどのようなものだったか再現することを試みます。
1)『復活』劇から
『カチューシャの唄』
2)『その前夜』劇から
『ローレライ』 ※脚本に出ている歌詞で
『眼のない鳩さん』
『乾杯の歌』 <ヴェルディ『椿姫』
『ゴンドラの唄』
3)その後の劇中歌ほか
『さすらいの唄』 <『生ける屍』から
『宵待草』 ※大正6年の藝術座音楽会(牛込藝術倶楽部)で初公演
ステージと客席一体になって歌うコーナーもあります