草木塔建立の歴史は、江戸期にまで遡るが,建立の風習は現代まで引き継がれ、まさに置賜地方の伝承文化の一つになっている。しかしながら,自然との関わりあいが薄れつつある現代の生活において,草木塔の存在やその意味を知る人々の数が少なくなっていることもまた事実である。伐採した木や草を鎮魂する風習は,全国的に珍しく,林業に深く関与してきた置賜地方特有の文化であることを後世に伝え,現状を保全していくことは,現代に生きる我々の責務であろう。
 文化は人々の生活とともに改変されていくものであり,その改変を否定することはできない。一方で,脈々として受け継がれてきた歴史は,その文化を理解するために必要であり,捨て去られるものではない。有形の文化として残る草木塔は,風化し消失してしまう危機にある。それらを保全していくためには,現在,確認されている草木塔に関するデータベースを作成しておく必要がある。とくに,草木塔の位置情報は,具体的な保全策を提案するために不可欠な情報であることはもちろん,未発見の草木塔を確認するためにも重要である。さらに,草木塔の正確な位置を広く示し,地域固有の文化を物語る草木塔が身近に存在していることを住民に教示することは,地域アイデンティティの確立にも有効であると考える。

草木塔データベース
*このデータベースは,普及版の簡易GISソフト「地図太郎」とのリンクにより,草木塔の位置と属性を同時に管理するために作成されています。
 同データベースには写真が添付される予定ですが,公開版では写真を添付しておりません。
 なお,データベースの検索エンジンは,平成18年度山形大学卒業生安斎隆一氏が卒業論文のために作成したプログラムを一部改変し使用しています。

山田浩久(2006)「地理情報システムを用いた草木塔分布図の作成」,環境保全,9,39-46.より抜粋

草木塔分布図の作成

草木塔分布図01
 山形県置賜地方の草木塔分布です。同地方に集中して建立されてきた草木塔ですが,その分布を見ると,最上川上流域の支流沿いに設置されているものが多く,草木塔と川との密接な関連を読み取ることができます

草木塔分布図02
 紙の地図とは違いますから,目的に応じてスケール(縮尺)や背景図を変えることが可能です。この地図は,空中写真の上に草木塔の分布を示したものです。