アルバイトにも資格制――働きがい提供、競争力を左右(経営の視点)
(03/10/12,日本経済新聞 朝刊,5頁)
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日本マクドナルドがアルバイト従業員を対象にした新手の資格制度を試みている。接客能力や協調性、達成意欲などを審査して社長名の認定書を授与する。取得者には履歴書への記入などを奨励しているのがミソ。アルバイト経験を就職活動に役立つようにして、仕事への意欲を高めてもらおうというわけだ。
同社のアルバイト数は約十二万人だが、審査を受けられるのはリーダー格の約五千五百人。希望者が申し出ると、店長が技能や態度・行動を二十一項目にわたって評価する。六月に制度を導入して以来、資格取得者は四十二人に達した。
高校時代から約九年働いている保阪大輔さん(24)は九月、東京・新宿の店舗で「一級」の認定を得た。「評価結果が通知されるので自分の強みや弱みが分かり、目標を立てやすい」と話す。当面はアルバイトを続けて「上級」取得を目指すが、将来は資格をアピールし、同社を含む企業に正社員として就職することも考えている。
八木康行社長は「アルバイトの皆さんには資格取得を契機に自分のキャリアを考え、様々な企業で活躍してほしい」と語る。制度を発案した人事部の俵山祥子マネージャーは「資格があると就職に有利、という実績を上げたい。優秀なアルバイトの確保にもつながる」と意気込んでいる。
コンビニエンスストアのサンクスアンドアソシエイツでは、アルバイトも対象とした独立支援制度を設けている。筆記・実技試験に合格してライセンス認定を受ければ、店長として独立する際に必要な資金を三百万円から二百万円に減額する仕組みだ。その後、直営店に勤めて一定の業績評価を積み上げれば、残り二百万円も免除される。
合格者は二百八十人を超え、中には学生も含まれている。同社は「まずは店舗運営の能力を高めてもらうことが狙い。さらに将来の目標として励みにしてもらえれば」と言う。
企業のアルバイト資格導入について、静岡産業大学の後藤俊夫教授は「雇用流動化が進むなかで仕事の格付けは重要。業界ごとに『外食二級』『コンビニ一級』といった共通資格も設ければ面白い」と指摘する。
自らもアルバイトに教育効果を認め、講義の一環として学生に就業体験を六千字前後でリポートさせている。昨年からは学園祭で「アルバイト名人コンテスト」も開催、成績評価に加味している。
「職業観を養い、自己発見する場として活用するべきだ。企業や経営に関心を持つきっかけにもなる」と後藤氏。今年十一月のコンテストでは企業の視点を取り入れるため、マクドナルドからも審査員を招く。
外食、流通業界ではアルバイトやパートが現場の主戦力だ。就職難で企業社会に疎外感を抱く若者も増えており、単に労働の対価として給料を払うだけでは士気が上がらない。彼らが資格制度などによって自らの成長を確かめ、自信と意欲を深めれば、職場の生産性も向上するはずだ。
正社員以外にも働きがいを提供することは、広い意味で企業の社会的責任(CSR)の一要素と言えるし、会社の競争力にはね返ってくる。
(編集委員 塩田宏之)