公務員対策講座「雇用 格差問題」(2/9)への質問・コメントについて

安田均(10/02/09)


・ジニ係数の「0.1にも満たない上昇」がどの程度影響があるのか疑問に思った。

 問題と思うか思わないかは捉え方の違いもあるが,そもそもジニ係数は0から1の値をとる(「ジニ係数」「ローレンツ曲線」を参照のこと)。10ポイント上昇なんかない。
 橘木は,80年代末の先進諸国の値が日0.365(所得再分配前0.439),米再分配前0.40,英0.34,仏0.372,ノルウェー0.33フィンランド0.21であることを示し,再分配前は「わが国のジニ係数の方が(アメリカより)高い」「わが国の所得分配の平等性は,信じられていたほど国際比較上からも高くなく,平等神話の崩壊を予感させる」(p6-8)と述べている。
 

・正社員を解雇しないための手段として非正規の契約解除が法的に認められている

 正社員であれ非正規雇用であれ「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合その権利を濫用したものとして、無効とする」(2003年に追加された労働基準法第18条の2)。
 但し,有期契約である非正規雇用の場合,期間満了による契約不更新はそれ自体では合理性がないとはいえない。他方,「期限の定めなき雇用」(正社員)については,判例の積み重ねのなかで確立した「整理解雇の四要件」では,「人員整理の必要性」とともに,「解雇回避努力義務の履行」が掲げられ,整理解雇以外の雇用調整手段を尽くしたことが求められている。

・「厚生年金の適用範囲を広げる」とは?

 正社員の加入する厚生年金は保険料が報酬比例(標準報酬月額×保険料率÷2,労使折半)なので受け取る年金も多く,給料天引きなので未納・未加入問題(資格期間が足りずに不受給,財政基盤脆弱)が起こらないのに対して,非正規雇用の加入している国民年金は,保険料徴収に企業が関知せず本人任せなので未納・未加入問題が起きる(皆年金なので加入義務はあるはずなのに)。また保険料が定額で受給額も低い。
 これに対し,週数時間の,文字通りのパートタイム労働者は別にして,就労時間の長い非正規雇用は厚生年金(or共済組合)に加入させれば,上記問題を防げるということ。

・「水際作戦」のチャート図には,生活保護の申請が(市町村の福祉事務所から)却下された場合,上級行政庁(都道府県)に審査請求できるとあるが,(却下した市町村への)異議申し立てを経なくても審査請求できるのか?

 和泉田先生に教えを乞うたところ「これは私の専門だから私の方から回答します」(その方が正確だろう)とのことでした。いずれ回答が掲示されます。
 審査請求の前提要件として異議申し立てを求める制度と求めない制度がある,生活保護はどちらか,がポイントのようです。