目次◇活字の入門書
その1)インターネット全般のモラルについて
その2)情報発信と収集のモラル
その3)明日は我が身
◇ネットで読める心得集
◇自己責任と“三人寄れば文殊の知恵”
○その1)インターネット全般のモラルについて○その2)情報発信と収集のモラル大向一輝『ウェブがわかる本』岩波ジュニア新書562、岩波書店、2007年、987円中高生向けの新書ではありますが、その分わかりやすいでしょうから、本マニュアルに飽き足らなくなったひとにもお勧めします。電子掲示板については別ページ第五部「電子掲示板を使おう」で詳しく説明していますが、あなた自身がネット上での言論表現の主体として掲示板に投稿したり電子メールを使ったり、更には自分でウェブサイトやブログを開設していく際には、より実践的な解説が有益と思います。
- 久保田裕、佐藤英雄『知っておきたい情報モラルQ&A』岩波アクティブ新書019、岩波書店、2002年、700円
- HIROMI『インターネットの秘密:誰も書けなかったネットのルール』ローカス(発売:角川書店)、2001年、1300円→山大図 開架 547.48//インタ
- 石田晴久『インターネット安全活用術』岩波新書新赤版917、岩波書店、2004年、780円→山大図 開架新書 547.48//インタ
『情報モラル』は著者のお二人が ---
社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS/前身は1985年設立の「ソフトウェア法的保護監視機構」)--- の人たちであるように、著作権保護を重視した問答集であるのが特徴です。自分のウェブサイトに本の表紙の写真を使えるかどうか(8頁)、自分で撮影した歌手の写真はどうか(52頁)等々。もちろん電子掲示板や電子メールでのトラブルも扱っています。
http://www2.accsjp.or.jp/http://www.accsjp.or.jp/『…の秘密』著者の「HIROMI」氏(言うまでもなく実名ではなく「ハンドルネーム」です。別ページ「第三部ネット書誌事項/ウェブページ/ページの著者名(仮名と実名)」参照)は、
ウェブサイト「SAPOSEN.COM サポートセンターの秘密」 http://www.saposen.com/--- の運営をしていた方です。この「サポセン」は文字通りパソコンやソフトのメーカーのサポートセンターでユーザーの相談業務にあたっている人たちの“打ち明け話”の投稿で有名になったサイトで、そうした“反面教師”たちの実例から汲み出された“上手に相談する/される方法”も教えてくれています。(自称「先生」からの相談に失礼で要領の悪いものが多いというのは考えさせられます。)
※サイトは2005年8月31日をもって閉鎖。『…活用術』は上記の『…使いこなそう』よりも更に突っ込んでセキュリティ面の対策を学びたいひと向けです。「ユーザには悪人はいないという前提で開発され」たインターネットが、今や利用者の誰をも「無意識とはいえ加害者に」してしまいかねない状況において、どう行動すべきかがネット開発の第一人者によって論じられています。この時代、本人はローカルなつもりでやったことでも、インターネット上でしたことなら世界中に影響力を持てるというのがネットのメリットであり、デメリットです。
ネットが今世紀中に月と火星くらいにまで広がるかどうかはともかく、思いもよらぬ遠方から警察が逮捕しにやって来るのは日本でも珍しくありません。例えば、
神戸新聞ニュース>HP侵入、無断で閉鎖 兵庫の学生ら3人逮捕(2006年12月08日)http://www.kobe-np.co.jp/kobenews/sg/0000187011.shtml--- という事件では、他人のパスワードを使い、ウェブサイトの運営者に無断でサイト閉鎖の手続などをしたとして「私電磁的記録不正作出・同供用」容疑で逮捕された3人はそれぞれ北海道、山梨県、兵庫県の在住で、彼らを逮捕したのは(東京の)警視庁でした。ちなみに3人にはお互いの面識は無く、同じ“ネット攻撃”情報交換サイトの常連だったそうな。
※2008年06月段階ではNot Found。
○その3)明日は我が身◇ネットで読める心得集上記の『インターネット安全活用術』は、“無意識のうちに”加害者になってしまうのを防ごうという本でしたが、同様に、ネット犯罪を防ごうとしていたのに、なぜか加害者の側に回ってしまった方の事例も、その著書とともに紹介しておきましょう。あなたにも、いつ暗黒面からの誘いがあるかわかりませんから。2006年の春、岩手地裁にて「ワンクリック詐欺」(別ページ「アクセスだけで伝わるあなたの情報」実例編も参照のこと)で詐欺罪などに問われ、
Yahoo!ニュース>毎日新聞>ワンクリック詐欺/地裁判決/岩手(2006年4月28日)--- として実刑判決を受けた3人の被告人のうち“参謀役”として裁かれたのは、「インターネットジャーナリスト」としてネット犯罪への注意を呼びかけたりもしていた人物でした(その著書の例↓)。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060428-00000048-mailo-l03
※2008年06月02日段階ではNot Found。『インターネット犯罪 だます人だまされる人』BNN新社、2002.12、1500円→山大図書館 開架 366.8//インタこの人が暗黒面に引き込まれたきっかけは、知人の会社役員から「ネットで儲けたい。やばいことでもいい」と相談された時にワンクリック詐欺を提案してしまったこと。法廷で彼(被告人)は、「詐欺の実態を体験でき、取材になるという出来心も働いた」とも供述したとのこと。実際2004年夏にワンクリ詐欺を始めてから「後に出版した本などには詐欺体験を踏まえた記述も盛リ込んでいた。」※出版社サイトでの紹介:『ネットで儲ける人が秘密にしていること:本当に儲けている人は何をしているのか?』PHP研究所、2005.8、1200円
http://www.bnn.co.jp/books/title_index/public/post_15.htmlhttp://www.bnn.co.jp/books/archives/2003/01/post_7.html※出版社サイトでの紹介:http://www.php.co.jp/bookstore/detail.php?isbn=4-569-64373-6そして会社役員からは、「詐欺がばれれば、ジャーナリストとしての仕事がぶっ飛ぶ」という趣旨の言葉で脅されてズルズルと続けてしまったらしい(『河北新報』朝刊2006年4月11日記事「法廷 内と外/ワンクリック詐欺/弱みにつけ込まれ転落」)。まさに、“過(あやま)ちては改むるに憚(はばか)ることなかれ”でした。
なお1999年から2000年にかけての官公庁ウェブサイトへの不正侵入事件報道で、“「ハッカー」イコール犯罪者”のイメージが広がりました。しかし、他人のウェブサイトに不正に侵入してデータを改竄(かいざん)・破壊するような者は「クラッカー」あるいは「クラッシャー」と呼ぶべきであり、「ハッカー」の方はコンピュータに精通した人というのが本来の意味です。
また、言うまでもありませんが、以上で紹介した参考書の見解に松本が全面的に賛同しているわけではありませんので念のため。例えば上記『情報モラル』のウェブページの「リンク」についての見解(152頁)はまったく松本とは異なります。(さしあたりは、詳細は松本サイトでのリンクについての方針を読んでください)。
いろいろな個人や団体が提案をしていますし、上記の『…活用術』でも石田氏が「9章 インターネットから身を守るための一〇ヶ条」を提唱しています。◇自己責任と“三人寄れば文殊の知恵”ここではネット上でも有名な弁護士によるものと、インターネットプロバイダー業者を含む電気通信事業者の団体からのものとを紹介しておきます。紀藤弁護士が言う「本当に正しいと思うのであれば、逮捕されることも恐れてはいけないと思います。」(「第七のルール」より)という視点は特に重要です(ただし、これまでの学生の実習での感想を読んでいると、この点が最も学生にとってはピンと来ないか、違和感を覚えるところのようです。なぜかを追究するのも必要だ)。
紀藤正樹(弁護士) http://homepage1.nifty.com/kito/
>「提案 サイバースペースの市民のための7つのルールと3つの前提」
http://homepage1.nifty.com/kito/7rules/index.htm
http://homepage1.nifty.com/kito/7rules.top.frame.htm
社団法人テレコムサービス協会(第二種電気通信事業者および情報通信関連事業者を中心とする業界団体)
http://www.telesa.or.jp/
>テレサ協のガイドライン http://www.telesa.or.jp/guideline/index.htm
>「インターネット自己防衛マニュアル」
http://www.telesa.or.jp/self_difence/index.htm
http://www.telesa.or.jp/html/990426.htm※2006年度「アジア政治・外交論演習」ネット実習課題
※2005年度ネット実習課題の1(2005.6-)
※2004年度後期「基礎演習」実習課題(2004.11.18-)→感想(別ページ)
※2003年度後期「基礎演習」実習課題(2003.12.18-)
※2003年度前期「特別演習」実習課題(2003.5.6〜5.13)
本マニュアルと上記のウェブページを読むことで、“心構え”はOKのはずです。もちろんインターネットの世界が日進月歩で便利になっていくと共に、“浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ” とばかりにコンピュータウイルスも、またネットを使った悪徳商法も次々と新種が登場してくるでしょう。
ここで連綿と続く迷惑メールについて、別ページでの事例集も紹介しておきます。しかし、こうした心構えと、“何か心配事があったら他人に相談する”ようにしていれば大丈夫です。もちろん“その日”のためにも友人からの相談事にはきちんと乗ってあげましょう。“情けはひとのためならず”その参 です。よって、“大人なんだから一人で決めましょう”とか“誤解されるといけないから家族には言わないように”などといった文句を聞いたら要注意です。「イラク日本人人質事件」をへた今だと、“何でも自己責任なんだから、他人を頼ったり、迷惑をかけてはいけません”なんてのもありそうです。そういう手合いは“三人寄れば文殊(もんじゅ)の知恵”を恐れているのです(それと「クーリングオフ」期間を無為に過ごさせるため)。一方、プライドが高い人ほど、“私が騙(だま)されるなんてことはありえない”とか、“騙されたなんて恥ずかしくて他人には言えない”と思いこみやすいので、かえって深みにはまって傷を深くしてしまう危険があります。騙す奴の方が絶対に悪い! 泣き寝入りして悪をのさばらせてはいけません。
自分で情報を集め、複眼的に考え、情報の真贋(しんがん)を吟味(ぎんみ)し、自分で決断する(この能力を身につけるための練習の場が、大学でのレポートやゼミだったりする)。間違えたことに気づいたらやり直す。
必要なのは誤らない自信ではなく、他人の力を借りる謙虚さと、誤ったと気づいたときに謝る覚悟と言うべきでしょう。これもまた“過(あやま)ちては改むるに憚(はばか)ることなかれ”です。世に続発している不祥事は、ミスを犯したことよりも、ミスを糊塗(こと)しようとしたことによって深刻化していることに注意(2008年初夏には「船場吉兆」も廃業しましたねぇ)。
以上の覚悟をもって「ネット世界」に挑む前に、「ネットの世界の特徴」へ。紙の世界とはちょっと(かなり)様相が異なりますので。