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「日本外交論演習」の記録
2022年度期末論文

 

文責:松本邦彦
最終更新時:2023/09/21(木)/増築:2023/09/21(木))

◎期末論文題目リスト(&目標規定文)
《4年生》
・「日韓慰安婦問題における2015年合意について」
 
・「日本の事業系食品ロス問題とその対策について」
 まだ食べることのできる食品が廃棄されるという食品ロスの問題が近年、世界的に注目されている。食品ロス問題が拡大することによって、環境面、資源面、経済面に対して様々な影響を及ぼしている。また、食品ロス問題は日本も例外ではない。日本の食品ロスのうち、約半分が事業から発生している。事業系食品ロスは年々減少傾向ではあるが、それでも、売れ残りや食べ残しが発生し、廃棄されていることが現状である。本論文では、日本の食品ロスの中でも、特に事業系食品ロス問題の原因としてどのようなものが考えられるのか、また、その対策としてどのようなものがあるのかを明らかにする。そして、事業系食品ロス問題を解決するために今後何が必要なのかについて、自身の考えを述べる。
・「韓国人元徴用工問題解決に向けて:中国人強制連行・強制動員の和解事例から」
 韓国人元徴用工問題は解決の兆しが見えず、日韓問題の焦点の一つとなっている。一方、類似事例として中国人強制連行・強制動員が挙げられる。中国人強制連行・強制動員については和解事例がいくつかあり、その事例がほぼない韓国人元徴用工問題とは異なっている。そこで、両者の共通点、類似点、相違点を確認することで、なぜ韓国人については和解ができないのかを明らかにし、どうすれば解決に結びつけられるのか考察する。その結果、両者には、強制的な労働であったという点では共通しているが、その期間と連行・動員された
人数、また、日韓請求権協定、日中共同声明において明記された歴史認識に違いがあることがわかった。そして、韓国人元徴用工問題を解決に結びつけるためには、日韓両政府の協議により協定において明記されている歴史認識を修正・補完することや、元徴用工と企業の間での直接的な交渉が必要であることがわかった。
・「基地建設が起こす政治的対立:辺野古の海を事例に」
 普天間基地移設問題とは宜野湾市にある普天間基地の機能を名護市辺野古に移設する問題である。1995 年に起こった米兵の少女暴行事件をきっかけに、沖縄県全体で起こった基地反対運動の中で日米両政府は見直しを求められ普天間基地の移設候補地として名護市キャンプ・シュワブの辺野古沖が浮上した。その後、「移設容認派」と「移設反対派」とで対立し長年の問題となっている。そこで本論文では、今一度、普天間基地移設問題の経緯を整理することで、基地建設における影響の有無、政治的対立を確認し、「移設容認派」と「移設反対派」それぞれの主張を分析してから自身の考察を入れ込んで今後どうしていくべきかを述べ結論とする。
・「人権デューディリジェンスと日本企業」
 人権デューディリジェンス(人権DD)は、企業が事業活動をする際に強制労働や児童労働、ハラスメントなどの人権侵害リスクを特定し、それに対処するための行動をとることである。2011 年に国連で承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」をきっかけに、近年世界で注目されており、日本は欧米諸国と比較してその取り組みに後れをとっていることが問題視されている。さらに、日本国内でも人権DD に積極的に取り組む姿勢を見せる企業とそうでない企業との間に大きな差が生まれている。そこで、本稿では国内のより多くの企業に人権DDの尊重を意識づけるには、今後どのような仕組みが必要になってくるのかを考えていく。人権に関する取組状況のアンケート結果から日本企業の現状と、取り組みが遅れている企業の特徴や傾向を明らかにし、現在おこなわれている対応策を紹介するとともに改善のために今後何が必要になってくるのかを結論としたい。
《3年生》
・「地域おこし協力隊における課題と対策について」
 日本では過疎地域や高齢化が進む地域の増加や、各地域における地域づくりの担い手の減少が長年の問題となっている。このような問題の解決を目的とした施策の1 つに「地域おこし協力隊」という制度が挙げられる。
 この制度は2009 年に施行されたものであり、東京都をはじめとした三大都市圏や政令指定都市等から多くの人々が地域おこし協力隊として様々な地域に移住するようになった。その結果、各地域で新たな特産物が作られたり、新たに農業を始める人が
増えたりと、良い報告が次々と公開されていった。
しかし、一方では地域おこし協力隊として働く人々と自治体とのトラブルがあった。中には訴訟に発展した事例も存在しており、良い面だけでなく悪い面もあることが分かっている。私はこれらの事例や現状を知るべく、元地域おこし協力隊、現地域おこし協力隊の両方のブログやSNS を用いて調査を行った。
 本論文では、上記の調査結果をもとに、地域おこし協力隊という制度における問題点を明らかにし、その原因や対策について考察していく。
・「地域住民による避難所運営について」
 日本は、地理的位置や気象などから、台風や地震、火山噴火などの自然災害が発生しやすい国土となっている。
 災害時の救助活動や避難所設営など災害対策は主に地域の行政機関が実施するが、阪神淡路大震災において行政機関による初動対応には限界があることが明らかになり、その後の東日本大震災でも津波によって行政職員が被災し、行政の機能が低下するなどの問題あった。
 このようなことから災害発生時には、地域住民による自主的な防災活動が非常に重要であり、地域住民同士や住民と行政職員が互いに協力して災害に対応することで被害を最小限に食い止めることができる。
 本レポートでは、災害対応の中でも避難所の運営における課題を明らかにし、それらの課題について地域住民がどのような形で協力することができるか、またそのためにどのような準備が必要であるかを考える。
・「男性の育児休業について」
 日本の育児休業取得率は、2021 年時点で女性は約85%と高水準で推移している一方で、男性は上昇傾向にあるものの約14%と大幅に低水準となっている。そこで、何故日本では男性の育児休業取得率が低水準なのか、その現状と対策を調査する。令和元年度12 月に閣議決定された「第2 期『まち・ひと・しごと・創生総合戦略』」に明記された政府目標である令和7 年度までに男性の育児休業取得率30%を達成するために行われている取り組みを紹介し、今後どうすべきか取り組みを補強しうる有効な対策を提言することをテーマとする。本論文ではまず、日本の育児休業の現状と男性の育児休業取得率が低水準で推移している原因を調査し、問題点を明らかにする。そして、男性の育児休業取得促進のために行われている取り組みを取り上げ、政府目標達成に向けての今後の対策を提言していく。
・「小選挙区比例代表並立制下の自民党の人事慣行」
 自民党の人事慣行は、中選挙区制のもとで制度化されてきた。佐藤・松崎の共著である『自民党政権』は自民党の長期政権下における運営を網羅的に分析しており、自民党の人事慣行は、派閥との関連で派閥勢力比型、派閥代表型、全員参加型の分類が存在すると主張している。また議員のキャリアパスが制度化され、年功序列人事(シニオリティ・ルール)が確立したことを指摘している。本稿では、これらの人事慣行が1996 年から実施された小選挙区制比例代表制のもとでも変化したのかどうかを追究する。具体的には小選挙区比例代表並立制が導入された1996 年の衆議院選挙の橋本内閣から現在の岸田内閣までを対象に派閥勢力比型、派閥代表型、全員参加型が確認されるのかを分析する。調査の結果、どの人事慣行も維持されていることがわかった。しかし、わずかな変化が、派閥勢力比型にみられ、その背景を探ると、選挙制度と国会審議活性化法の存在が考えられるという結論に至った。
・「デジタル化による地方創生」
 現代の地方は少子高齢化やインフラの老朽化など様々な問題を抱えていると言われている。そしてその多くが、いわゆる2014年の「増田レポート」により消滅可能性都市として挙げられており、地方創生は急務である。地方創生のために様々な取り組みがなされてきたが、中でも2021 年に発足した岸田内閣の打ち出した「デジタル田園都市国家構想」は大きな注
目を集めている。本論文では、デジタル化は地方創生の新たな取り組みとして有力かどうかを検証する。まず「増田レポート」の概要を確認するとともに、地方創生の在り方について論じる。次にデジタル田園都市国家構想の具体的施策としてのスマートシティについて考える。地方創生に向けた取り組みとしてデジタル化を推進している福島県会津若松市の「スマートシティ会津若松」について調べつつデジタル化の地方創生について考えたい。そして最後にデジタル化による地方創生が有効かどうかを考えるとともに、現状考えられる課題についても考えたい。


《以上です》