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ウェブ版『検索マニュアル』第二部
検索エンジンを使う前に --- ネット世界の特徴
最終更新時:2009年12月10日/建築開始:2008年06月02日)
リンクについての方針
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 --- 《引用の作法》実習でアクセスした人は、この「第二部」は一通り読んでください。 ---
 --- 「ネット上の情報の特徴/検索エンジンの特徴」についての実習票の“正答”は、この「第二部」を読み通すと分かるようになっています。 ---

目次
検索エンジンの落とし穴
自費(自由)出版の世界
重要なのは情報の質
まずは公式説明へ
リンク集を活用しよう


◇ネットの海は「玉石(ぎょくせき)混淆(こんこう)
○検索エンジンの落とし穴
 ネット上で情報を探すとなると、「検索エンジン」というウェブページを検索するサイトで、キーワード(検索語)を入力して探すという手段がよく用いられます。

 しかしキーワードによっては何万件・何千件もヒット(検索該当)がある一方、いざ見に行ってみると“なぜ、このページがヒットしたのか?”不思議になるもの(つまりハズレ)が多く、数ある検索エンジンの使い分けとキーワードの使い方をよほど工夫しないと、目当ての情報はなかなか手に入りません(おまけに、見つけたつもりのページが「Not Found」になることも多い→別ページ「トラブルの対処法」参照)。図書の検索よりももっと難しいとする説↓は妥当です。

※「インターネットで情報を検索する方法は難しくない。しかし、自分が必要とする情報を手にするのは、有料データベースの場合よりはるかに困難である。インターネット上の膨大なウェッブ・サイトには各種の情報が掲載されているが、検索して求める情報を手にするのに時間がかかり、読んでみるまでその価値がわからず、本当に信用してよいかは他の情報でチェックしなくてはならない。」東谷暁『困ったときの情報整理』文春新書180、2001年、700円、94-95頁〕 ←※本からの引用時の出典表記の例。
○自費(自由)出版の世界
 また、ネット世界では紙と印刷の世界よりもずっと容易に自分の著作を発表できます。紙の世界では少数派の自費出版や同人誌が、ネット世界では多数派と言って良いでしょう。

 これは言論の自由という点では画期的な世界です。しかし出版社も編集者も要らないということは、本人が書いたものがそのまま、つまり第三者の目や手が入らないまま登場してしまうということでもあります。商業プロバイダーが契約者のウェブページを掲載前にチェックすれば「検閲」となり、言論表現の自由の侵害ですから。

 では、そんなシロート(素人)が書いたページがヒットしたとして、それはあなたにとって役立つものだろうか? 信頼性は?

 本を書いて出版するのを考えれば、日本だけでなく世界中からアクセスされるようなウェブページに、そうそうあやふやなことは書いていないはずです。日本語を読めるのは日本にいるひとだけではないし、今は特定のURLを指定すれば機械的に翻訳をしてくれるサイトもあるので、日本語ページを読むのが日本語使いだけとは限らない(本の場合はこうはいかない)

※機械翻訳サイトの例:
 また、ウェブページは電子情報ですから、ネット上から本人が消しても、すでにダウンロードされていたファイルが再度 -- 他人によって -- ネット上にアップロードされるかもしれません(「Winny」などによって流出した機密ファイルは全面回収はまず不可能)。つまり本人が好むと好まざるとにかかわらず、ネット上に一度出現した情報は半永久的に流通しつづける可能性があるわけです。むしろ過去のウェブページを -- 永久に -- 保存することに価値を見いだす「インターネットアーカイブ」というサイトもあるほどです。

 しかし実態は全く逆です。殺人事件の被害者が生前に書いていたウェブ上の日記「ブログ(ウェブログ weblog)」が死後に“晒(さら)し者”にされるという事例が相次いでいることに象徴されるように、およそ紙に書かれるようなものはすべてウェブ上に登場していますし、書いている本人は、それがどこの誰にいつまで読まれるかなんて意識しないでいる場合も多い。

※だからといって、世界の情報すべてがウェブ上に再現されている(されていく)と考えるのは「甘い甘い甘い」(その1)。この点は別ページ「より信頼性の高い情報を手に入れるには」にて。
 よって現実には、「日記」などの本人の感想だけでなく、本来は酒席や仲間内(うち)でしか言い合わないような乱暴な(素面で聞くと恥ずかしい)意見、単なる思いこみによる誹謗(ひぼう)中傷、果ては妄想(もうそう)のたぐいまでもがネットには溢(あふ)れています。“これを書いたのはあなたですか?”と公衆の面前で問われて、“はい”とは言い得ないような言論です。

 それはそれで“現代社会”を知るためには貴重なデータではありますし、匿名だからこそ言える意見にも価値はあります(そもそも主権者としておこなう投票こそ、無記名である)。しかし、妄想を妄想として扱って分析したり、楽しんだりするのと、真実として信じ込むのとでは大違いです。

※そもそも、「日記」とか「私の本音」とか銘打ったブログに100%本当のことが書かれていると思うなんて、紙の日記と同様に、「甘い甘い甘い」(その2)。これは本人の身になって考えてみればわかるはず。
 ちなみに紙の世界での楽しみ方として、「トンデモ本」があります。これについては、今や前世紀末の古典的名著との位置を得た ----
と学会編『トンデモ本の世界』洋泉社・1995年→1999年に宝島社文庫・667円へ
 ---- をどうぞ。またネット世界での「トンデモ」ウェブサイトについては、
と学会編『トンデモ本の逆襲』洋泉社・1996年→2000年に宝島社文庫・667円へ
 ---- 所収の、
皆神龍太郎「本家トンデモ・インターネット活用ガイド」
 ---- が格好の入門編となるでしょう。
○重要なのは情報の質
 そしてインターネットの閲覧ソフトで見ている限りでは、政府機関のサイトも個人のサイトも同じように(場合によっては個人サイトの方が綺麗に)表示されます。あなたは、それらを、見た目に惑わされずにチェックし、情報の質を確かめる必要があります。

 ここで厄介(やっかい)な点は、見つかったウェブページをただ一つ読んだだけでは、その文章をいったい誰がいつ書いたのかがわからない場合があるということです。例えてみれば、本を開いて差し出されたようなものです。見開きの2ページ分しか読めません。そもそも題名すらわからないかもしれません。そんなものをあなたは --- ウェブページに書いてあるというだけで --- 信じますか?

 本であれば目次欄や奥付けを探して、誰がいつ書いたものかを確かめ、その上で信用度を測るはずです。ではネットではどうするのか? この点については別ページの第三部「引用の作法とは」以降にて説明します。

○まずは公式説明へ
 さて、どうするか。まず一つは当事者の“公式説明”を探すという手があります。そのためには、まずは当事者の公式サイトを探します。

 とは言え最近は国内では「産地偽装」「賞味期限偽装」「市役所・警察の裏ガネ」、世界では「イラク占領での捕虜虐待」等々、企業や政府機関での不祥事が相次いでいます。更には権力とカネから最も遠いはずの研究者の世界でも「旧石器遺跡捏造(ねつぞう)事件」が起こったことも記憶に新しい(もう忘れた?)。いったい誰が真実を述べているのか? “お詫び”のその後は信用できるのか?

 それでも企業や政府がやっていることについて知るためには、まずはそれらが公式に設けたウェブサイトに当たるのは定石です。そして、上記のような不祥事を自分から公表した組織が稀(まれ)で、ほとんどが内部告発と調査報道によって暴露されていることを踏まえ、“都合の良いことしか書いていないのでは?”という留保条件を付けながら読みましょう。

○リンク集を活用しよう
 そしてもう一つの手は、ネット世界での“図書目録”です。つまり誰かがネット情報を選別して整理してくれた一種の“目録”(ネットでは「リンク集」)を探すのが、目当ての情報にたどりつく近道の一つなのです。

 しかもネットの世界では、あなたと同じテーマについて既に調べようとしたひとが必ずいて、奇特にも(無料で)リンク集を出版・掲載してくれています。最終的には検索エンジンでキーワードを入れてヒットしたページを丹念にチェックしていくという作業は必要になりますが、その前に、リンク集を見つけるのが基本と言って良いでしょう。

 では“公式サイト”を探しに行く前に、検索エンジンについて説明します。別ページの第二部「検索エンジンの上手な使い方」へどうぞ。



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